編著/共著
読者ネットワークの拡大と文学環境の変化 19世紀以降にみる英米出版事情
音羽書房鶴見書店
2017年6月
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同時代の読者層、職業作家としてのあり方、出版と流通をめぐる背景、編集者の介在、著作権など様々な観点から、文学作品の生成と流通過程とを再検討する試みが近年多く現れている。本書はそうした動向を受け、「作家」研究に偏重しがちであった文学研究のあり方を出版文化全般に視野を広げ、「読者ネットワーク」と規定し、再検討する共同研究として構想された。
「英国編」・「米国編」と便宜上、名づけた二部構成により、19世紀初頭から、コラムまで含めれば21世紀初頭まで、英語圏出版文化を概観する。「小説」のみならず「詩」の領域をも取り込み、「雑誌」をはじめとする「定期刊行物」、「予約出版」から「海賊版」、オルタナティヴ系出版などの出版形態、ブッククラブなどをも含む流通形態、いわゆる「国民作家」をもたらしえた「読者」の大衆化、あるいは、表現規制をかいくぐる国際的な出版ネットワーク、「編集者」や「出版社」など・・・出版文化にまつわる多岐に渡る論点が本書には込められている。さらに、「コメントと応答」欄を設けることにより、「紙上シンポジウム」とでも称すべき相互交渉を目指した。出版文化の観点から英語圏文学/比較文学を捉え直す研究がより一層発展していく一助となれば幸いである。
(中垣恒太郎)