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早稲田大学高等研究所WIAS Top Runners’ Lecture Collection 建築×メディア×全体主義 全体主義体制下における建築とメディアの関係の独伊ソ比較研究

報告:本田晃子

日時:2017年2月25日 (土) 13:00 ~17:00
場所:早稲田大学早稲田キャンパス11号館9階 902号室

田野大輔(甲南大学)「民族共同体」の視覚表現としての建築── P・L・トローストとA・シュペーアを中心に
鯖江秀樹(関西大学)「レトロスペクティヴ・モダニティ──M ・ピアチェンティーニの建築/イメージ」
本田晃子(早稲田大学)「ソヴィエト宮殿──不在の中心、増殖するイメージ」

主催:早稲田大学高等研究所(WIAS)

全体主義国家において、建築はしばしば指導者の権威や理想的共同体を表象するプロパガンダ装置として機能してきた。とりわけ1930年代のドイツ、イタリア、ソ連邦では、首都改造を含む大規模な建設プロジェクトが次々に計画され、それらのイメージは、たとえ実現されなくともメディアを通じて広く流通することになった。このような観点から、2017年2月25日に開催された本セミナーでは、ドイツ、イタリア、ソ連邦の建築史ないしメディア論を専門とする研究者によって、戦間期の全体主義体制・建築・メディアの相互関係を、各国の事例を比較対照しながら読み解いていくことを試みた。

最初の報告者である田野大輔氏は、第三帝国時代のドイツのメディア研究の視点から、写真プロパガンダにおける建築プロジェクトや指導者、建築家のイメージの分析を行った。そして巨大な公共建築のプロジェクトが、「民族共同体」の視覚的表現として機能すると同時に、その形成手段でもあったと結論した。イタリア建築を専門とする鯖江秀樹氏は、ムッソリーニに重用された建築家ピアチェンティーニをとりあげた。イタリア国内ではモダニスト=合理主義建築家たちと対立していたピアチェンティーニであるが、鯖江氏は彼のドイツ建築旅行の記録から、ピアチェンティーニが前衛建築のなかのいわば「後衛」というべき部分には共感していたことを明らかにした。本セミナーの企画者でソ連建築を専門とする本田晃子は、スターリン時代を代表する建築家ボリス・イオファンと彼のソヴィエト宮殿設計案をとりあげた。そしてこの実現されずに終わった国家プロジェクトのイメージが、商品のパッケージから映画までさまざまな形で流通し、特に映画においてはそれが党指導部の見解を詳細に反映していたことを検証した。

このように、本セミナーでは各国の全体主義時代を代表する建築家たちをとりあげ、共同体の表象や古典主義、モダニズムへの応答といった全体主義建築に共通する主要な問題が、各国において具体的にどのように解釈され、言説やイメージにどのように反映されたのかについて、実りの多い議論を行うことができた。(本田晃子)

広報委員長:横山太郎
広報委員:江口正登、柿並良佑、利根川由奈、増田展大
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2017年7月29日 発行