翻訳
民主主義の発明 全体主義の限界
勁草書房
2017年1月
複数名による共(編/訳)著の場合、会員の方のお名前にアイコン()を表示しています。人数が多い場合には会員の方のお名前のみ記し、「(ほか)」と示します。ご了承ください。
フランスの政治哲学者クロード・ルフォールの主著(1981年)。アーレントの全体主義批判を引き継ぎ、ソルジェニーツィン以降のソヴィエト型全体主義批判を理論化し、それに対し「民主主義」の概念的素描を提示する。論集で、第一部には理論的な論考が、第二部ではとりわけポーランド、ハンガリーなどにおけるソ連的全体主義に対する異議申し立て運動についての時事的な考察が収められているが、「全体主義国家は、民主主義に照らしてしか、そして民主主義の両義性にもとづいてしか把握できない」という認識が全体を貫いている。〈権力〉、〈法〉、〈知〉や、〈公〉と〈私〉といった元来異なる審級を融合・一体化させる欲望に「全体主義」の象徴的形成を見てとり、それに対し内的な〈抗争〉や差異化の可能性としての「民主主義」の絶えざる「発明」の契機が探られる。フュレ、ロザンバロン、ゴーシェらのEHESS派、カイエ、ルゴフらのMAUSS派、さらにアバンスール、バリバール、ランシエール、ナンシーといった、その後のフランスにおける政治哲学ないし「政治的なもの」をめぐる思索展開の一つの源流(ないし参照軸)をなす。全体主義と民主主義を考えるにあたり、振り返るべき古典だろう。
(渡名喜庸哲)