編著/共著
映画監督 小林正樹
岩波書店
2016年12月
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『人間の條件』『切腹』『怪談』『東京裁判』などの名作を生み出した映画作家・小林正樹監督についての初の書物。小林正樹作品にかかわった木下惠介、武満徹、岡崎宏三、篠田正浩、仲代達矢、石濱朗、橋本忍ら映画人による寄稿やインタビュー。菅野昭正、大橋一章、岡田秀則、劉文兵、スティーブン・プリンスら国内外の研究者による論考。約37時間に及ぶ小林正樹インタビュー、戦時中の日記、未完作『敦煌』のシナリオも収録。
劉文兵「小林正樹の「中国」」は、『人間の条件』と『敦煌』に着目し、歴史を超越する普遍的な物語性と、リアリズムへの志向性という二つのベクトルのもとで、小林正樹監督がいかに「中国」を発見していったかを考察し、さらに中国語圏における小林正樹作品の受容を、ジョン・ウー監督らへの取材を通じて明らかにした。すなわち、『人間の条件』において、小林はヒューマンドラマのジャンル的特徴、あるいは日本映画史の「お約束」を戦略的に用いることで、日本人の戦争責任の問題に迫った。ところが、そこから二十数年後、彼は『敦煌』をつうじて、リアリズムの方向から再び「中国」にアプローチしようとした際に、製作コストや興行面での制約などの厳しい現実が立ち上がり、企画を根本から揺るがしてしまった。
(劉文兵)