編著/共著

久米宗隆堀切克洋山崎健太、ほか(項目執筆)
岡室美奈子、大笹吉雄、神山彰、扇田昭彦(編集)

日本戯曲大事典

白水社
2016年9月
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本書は、明治・大正・昭和・平成のおよそ150年間に発表・上演された1万作以上の戯曲を、1250名の劇作家とともに紹介した大事典である。故・井上ひさし氏の発案により構想され、演劇研究者や演劇評論家、演劇記者を中心に80名以上の執筆者が携わり、長い年月をかけてようやく刊行にこぎつけた。演劇書を数多く出版してきた白水社の創立100周年記念事業の一環でもある。1964年に刊行された河竹繁俊編『総合 日本戯曲事典』が歌舞伎や能など古典芸能中心であったのに対して、本書は現代演劇までを視野に収めた、日本初の総合的な戯曲事典となっている。劇作家別の記載となっているので劇作家事典としても活用できるが、あえて『戯曲事典』としたのは、舞台のための戯曲であれば、演劇のプロフェッショナルである劇作家の作品に限らず、小説家や漫画家、映画監督らの作品をも含んでいるためだ。

本事典の特色としては、収録作家の経歴や作品名、主要戯曲の梗概がわかるのはもちろんのこと、河竹黙阿弥から20代の現役若手作家までを収録しており本名や生没年の確認に役立つこと、名作古典からポストドラマ演劇を含む現代演劇、ミュージカル、宝塚まで幅広く視野に収めているため作品名や発表年の確認に役立つこと、岸田國士戯曲賞をはじめとする戯曲賞受賞作・候補作一覧が充実しており通覧できること、「新作文楽」「新作能・狂言」「レビュー」「人形劇」「高校演劇」などについては別項目を立ててジャンル別に解説していること、などが挙げられる。使い易さも工夫し、索引は「人名」5千項目、「作品名」1万1千項目を立項した。人名索引においては「見よ」項目を充実させ、襲名の順もわかるように配慮し、作品索引においては作品名の後ろに作家名を併記し、脚色・潤色・翻案などの場合は♻︎とともにさらに原作者を付記した。

明治以降蓄積されてきた日本の演劇の財産をひとまとめにしたという資料的価値はもとより、劇団や劇場が上演用の戯曲を探すためのガイドブックとしても、実践的に活用していただきたい。

本事典の準備中に発案者の井上ひさし氏、編者の一人であった扇田昭彦氏が他界し、残念ながら執筆は叶わなかったが、お二人の意気込みや精神は充分反映されていると思う。本書が日本の演劇文化の保存と発展に少しでも寄与することを、編者の一人として願うばかりである。

(岡室美奈子)

広報委員長:横山太郎
広報委員:江口正登、柿並良佑、利根川由奈、増田展大
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2017年3月29日 発行