内閣総理大臣
菅 義偉 殿
第25期日本学術会議新規会員の任命拒否に抗議する学会声明
貴職は、第25期日本学術会議新規会員の任命に際し、日本学術会議が推薦した105名の会員候補者のうち、人文・社会科学の研究者6名を任命しなかったばかりか、その具体的な理由をいっさい明らかにしていない。このような態度は、日本学術会議法第3条によって保証された日本学術会議の独立性を蹂躙し、同法第17条に則り「優れた研究又は業績がある科学者」として日本学術会議が候補者の推薦を行なった趣旨を無視して、貴職による任命拒否の決定に従うことを強いる暴挙と言わざるをえない。
こうした措置は、同法第2条に謳われたところの「わが国の科学者の内外に対する代表機関」としての日本学術会議が目的とする、「科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させること」を阻害する行為にほかならず、同法前文が掲げる「科学が文化国家の基礎であるという確信」を揺るがせる点において、広く日本国民全体の福利をはなはだしく毀損する行為にほかならない。
文化芸術の実践と人文科学的研究に携わる者として、表象文化論学会理事会は、貴職による上記の任命拒否決定、および、その具体的理由を開示することの拒否に対して抗議し、6名の会員候補者の任命を貴職が拒否した直接の理由のすみやかな開示と合わせ、この6名をただちに会員に任命することを強く要求する。
2020年10月6日
表象文化論学会 理事会
会長 田中 純