6月29日(土) 第1学舎1号館
13:00-15:30 第1学舎1号館A503教室
パネリスト:
阪本裕文(稚内北星学園大学)
竹久侑(水戸芸術館現代美術センター)
リピット水田堯(南カリフォルニア大学)
司会:
門林岳史(関西大学)
美術批評家のロザリンド・クラウスは『北海航行──ポストメディウム的条件の時代における芸術』(1999)などの近年の著作において「ポストメディウム」という概念を提起し、モダニズム以後の芸術作品におけるメディウムの条件について考察している。クラウス自身の批評的関心は、「メディウム固有性」への純化というクレメント・グリーンバーグによるモダニズム理解に対するオルタナティヴを理論的に構築することにあるものの、「ポストメディウム」概念はクラウスの意図を越えて広範な理論的射程を持ちうるだろう。とりわけ、固有の技術的条件に還元しえない映像メディアの現状を再検討するにあたってこの概念は有用であると考えられる。以上の理論的前提にもとづき、本シンポジウムは、日本における実験映像の系譜をそのメディア的展開に重点をおいて回顧し、その現状について討議する。まず、実験映画/ヴィデオ・アートの研究者であり、日米の初期ヴィデオ・アートの上映会「ヴァイタル・シグナルズ」の企画など、多くの展覧会/上映会に携わっている阪本裕文氏に、戦後日本における映像を用いた実験的作品の系譜を紹介していただく。続いて「水と土の芸術祭2012」ディレクターを務めるとともに、「リフレクション──映像がみせる“もう一つの世界”」、「3.11とアーティスト──進行形の記録」などの展覧会を企画したキュレーターの竹久侑氏に、映像を用いた作品制作の現状について報告していただく。最後に『原子の光(影の光学)』、Ex-cinema: From a Theory of Experimental Film and Videoなどの著作のあるリピット水田堯氏に映画研究、映像理論の観点から映像のポストメディウム的状況について理論的展望を示していただく。これらの報告を受けて、映像を用いた作品制作のポストメディウム的条件へと議論を開いていきたい。