日時:2011年11月12日(土)16:00―18:00
会場:東京大学駒場キャンパス18号館コラボレーションルーム1

・中谷礼仁(早稲田大学)
・畠山直哉(写真家)
司会:佐藤守弘(京都精華大学)

「記録」は常に未来からの視点を前提としている。そこに見える光景は過去で
あっても、写真自体は延々と未来に運ばれる舟のようなものだ。(畠山直哉)


 多くの事件や災害と同じように、あるいはそれらとは比べものにならないほどに、東日本大震災は、膨大なイメージが生み出される現場ともなった。そしてそれらのイメージは、速報性や迫真性が重視される報道写真やテレビのニュース映像などばかりではないということも、徐々に明らかになってきている。表象文化論学会・第六回研究発表集会の全体パネルでは、まったく異なる立場から、しかしいずれもジャーナリスティックな姿勢とは無縁の方法論により、被災地の記録を実践するお二方を迎え、問題を提起していただく。陸前高田出身の写真家・畠山直哉氏は、震災直後にオートバイで現地に入り、瓦礫の荒野を撮影する。東京都写真美術館で開催中の個展『ナチュラル・ストーリーズ』にも出品されているそれらの写真を、畠山氏は、「誰かを超えた何者かに、この出来事全体を報告したくて」撮影するのだと語る。また建築史家の中谷礼仁氏は、2011年初頭、インドのボーパールに赴き、重大な公害事故を起こした工場跡地での、GPS内蔵のデジタルカメラを駆使した記録の試みを行なった。この経験を踏まえて震災後の東北に入り、かねてからの「古凡村」調査を新たに展開させる中谷氏は、環境そのものを人間のアーカイヴとしてみる見方を提案する。両氏の議論は、必ずしも当事者とは限らない私たちが、災厄のイメージを前にして、いかなる態度をとるべきなのかを問いかけることになるだろう。