2024年7月6日(土)13:30-16:15 H号館 H301
詩作し、文字を銅板に刻み、写真に像を焼き付け、ドローイングを描き、種々の物を依代として掲げながら朗読をする吉増剛造。60年以上に渡り現代詩という芸術制作を文字通り展開し続けてきた吉増の実践は、一人の人間が、その身一つで宇宙に対峙し、「世界」という全体を引き受けることができる証左に見える。
古代の巫女や1960年代の前衛舞踏家の系譜を纏いながらも、間違いなく2024年を生きる吉増の実践が逆説的に気づかせるのは、文学・芸術においても、学問においても、問題が細分化し、政治的文脈が前景化した結果、「社会」しか存在しなくなった今日の時代状況だろう。それは端的に言って芸術の危機であり、思考すること自体の危機なのかもしれない。おそらく私たちはもっと「吉増剛造」であっても良いはずなのだ。
このシンポジウムでは、吉増剛造による土方巽『病める舞姫』の解説、詩の朗読に続き、吉増の実践が拓く「世界」について、文学、人類学、宗教学の専門家が考察する。
吉増剛造(よしますごうぞう)
1939年、東京生まれ。1957年、慶應義塾大学文学部入学。在学中に岡田隆彦、井上輝夫らと「三田詩人」に参加、詩誌「ドラムカン」創刊。1964年、処女詩集『出発』。『黄金詩篇』(1970)で第1回高見順賞。『熱風a thousand steps』(1979)で第17回歴程賞。『オシリス、石ノ神』(1984)で第2回現代詩花椿賞。『螺旋歌』(1990)で第6回詩歌文学館賞。『「雪の島」あるいは「エミリーの幽霊」』(1998)で第49回芸術選奨文部大臣賞。2003年紫綬褒章。「詩の黄金の庭吉増剛造展」(北海道立文学館/2008)。『表紙omote-gami』(2008)で第50回毎日芸術賞。2013年旭日小綬章、文化功労者、福生市民栄誉賞。2015年日本芸術院賞、恩賜賞、日本芸術院会員。「声ノマ全身詩人、吉増剛造展」(東京国立近代美術館/2016)。「涯テノ詩聲詩人吉増剛造展」(松濤美術館/2018)。映画「幻を見るひと京都の吉増剛造」(2018)が国際映画祭10冠。七里圭監督作品「背」(2022)主演。映画「眩暈VERTIGO」(2022)が国際映画祭50冠。『Voix』(2021)で第1回西脇順三郎賞(2023)。第6回井上靖記念文化賞(2023)。「フットノート吉増剛造による吉増剛造による吉増剛造展」(前橋文学館/2023)。2024年3月には詩的映像日誌と手描きの作品を合わせた『DOMUS X』(コトニ社)が刊行された。
パフォーマンス:吉増剛造
吉増剛造シンポジウム:吉増剛造、坂口周(福岡女子大学)、相田豊(上智大学)
司会 柳澤田実(関西学院大学)