2021年12月5日(日)
午後13:00-15:00
ダストン/ギャリソン『客観性』を読む
岡澤康浩(京都大学)
増田展大(九州大学)
細馬宏通(早稲田大学)
司会:大久保遼(明治学院大学)
本パネルでは、今夏に邦訳が刊行されたロレイン・ダストン+ピーター・ギャリソン『客観性』(名古屋大学出版会)を取り上げる。
2007年に出版された原書は、英語圏の科学史を牽引する二人の科学史家が、「客観性」という科学の根幹にかかわる概念の史的生成について取り組んだ成果として、各界に大きなインパクトを与え、科学史における現代の古典となった。しかしながら、視覚文化論の第一人者であるジョナサン・クレーリーらが編者をつとめるZone Booksから原書が出版されていることからも分かるとおり、本書の射程は狭義の科学史にとどまらない。「科学アトラス」(科学的図像要覧)における表象技法といった視覚的な実践を通して、客観性の歴史を辿り直し、さらには客観性の担い手である科学的自己の生成をも描き出す本書は、クレーリーの視覚文化論的な業績を引き継ぐものと言えるだろう。本パネルでは、ダストンとギャリソンの『客観性』を出発点に、本書が視覚文化論やメディア論を含む表象文化論に対してもちうるインパクトについて議論を行う。
最初に訳者の一人である岡澤氏より、科学史とメディア論の接点としての本書の意義について報告いただく。続いて、視覚文化・映像メディア論の視点から増田氏に、モノを介した協働的インタラクションの視点から細馬氏に報告いただくことで、本書が表象文化論や関連領域に対して持ちうる可能性を明らかにしたい。