2021年12月4日(土)
午後13:00-15:00
誰が「決める」のか──即興演劇の上演形式「The Bechdel Test」における主人公像の協働構築の方法
園部友里恵(三重大学)
直井玲子(東京学芸大学)
舞台に立つ演者自身が自らの台詞や振る舞いをその場で紡いでいく即興演劇の世界では、「即興」であるがゆえに演者自身の有するジェンダーバイアスが物語構築のなかに持ち込まれることがある。こうした即興演劇におけるジェンダーバイアスの問題を扱う実践として、上演形式「The Bechdel Test」(以下「BT」と略記)がある。BTは、2016年に米国の即興演劇団体「BATS Improv」によって、主人公の多面的で複雑な姿を描き出すことを目的に開発された。主人公を3人の女性とし、各々のモノローグから始まる。各モノローグの途中で「ペインター」と呼ばれる演者がモノローグを中断させ、主人公の名前や身の回りにあるものなどを観客に問いかけ、主人公像を構築する手がかりとなるワードが決められていく。登壇者らは、日本でBTを開発者から継続的に学び、定期的にオンラインで上演してきた。
本ワークショップでは、BTの「はじめのモノローグ」及び「ペインティング」に焦点化し、これまで登壇者らの実践事例を紹介するとともに、当日登壇者らが実演したり、参加者とともにアクティビティを実際に体験しながら、BTにおける主人公像の協働構築の方法について検討していく。そのとき着目したいのが、“誰が「決める」のか”ということである。主人公像を決めるのは、主人公を担う演者自身なのか、ペインターなのか、観客なのか。ペインターの観客への問いかけによって、そこで描かれる主人公像がいかに変わるのかを丁寧に捉えていきたい。