2021年7月4日(日)16:00-18:00
本パネルは、今年邦訳が刊行されたヘンリー・ジェンキンズ著『コンヴァージェンス・カルチャー』が提起するコンヴァージェンス概念、参加型文化と民主主義の問題、ファン研究や受容研究との関係などを議論する。まだスマートフォンも存在せずソーシャル・メディアも今ほど普及していなかった2006年に発表された本書は、英語圏のメディア研究に大きな影響を与えてきた。原著の刊行から15年を経て、例えば本年初頭のトランプ支持者による米国連邦議会議事堂襲撃事件の例などをみるに、メディア化された資本主義社会と商品文化の中で市民として生きることに関して本書が提起した論点はさらに重要性を増しているように見える。すでにジェンキンズの議論を参照しながら研究を行なっている国内の研究者が、それぞれの研究にひきつけながら『コンヴァージェンス・カルチャー』の論点の紹介と批判的な検討を行う。平井智尚氏は「くだらない」とされてきた日本のネット文化について、陳怡禎氏はアイドル研究や民主化運動との関わりについて、倉橋耕平氏はネット右翼をはじめとするネット上の参加型文化についてコメントをする。ポピュラー文化と政治の境目が融解し、グローバルな資本の運動が国境を超えて我々の生活を変容させる現代において、日々否応なく晒されるポップカルチャーの内側から自己と社会の変革の可能性として『コンヴァージェンス・カルチャー』を現代の日本とアジアの文脈に置き直す。
発表者
平井智尚(ひらい・ともひさ)
日本大学専任講師/『「くだらない」文化を考える:ネットカルチャーの社会学』(七月社、2021年)など
陳怡禎(ちん・いてい)
日本大学助教/『台湾ジャニーズファン研究』(青弓社、2014年)、「社会運動空間における女性参加者のあり方:台湾ひまわり運動を事例に」『国際関係学部研究年報』(2021年)など
倉橋耕平(くらはし・こうへい)
創価大学准教授/『歴史修正主義とサブカルチャー:90年代保守言説のメディア文化』(青弓社、2018年)、「ネット右翼と参加型文化:情報に対する態度とメディア・リテラシーの右旋回」『ネット右翼とは何か』(青弓社、2019年)など
コメンテーター
阿部康人(あべ・やすひと)
駒澤大学専任講師/『コンヴァージェンス・カルチャー』共訳者
北村紗衣(きたむら・さえ)
武蔵大学准教授/『コンヴァージェンス・カルチャー』共訳者
組織者/司会
渡部宏樹(わたべ・こうき)
筑波大学助教/『コンヴァージェンス・カルチャー』共訳者