日時:2015年7月5日(日) 16:30-18:30
会場:早稲田大学戸山キャンパス32号館1階128教室

佐藤良明
門林岳史(関西大学)
武田将明(東京大学)
【ディスカッサント】麻生享志(早稲田大学)

詳註つき新訳(新潮社、2014)の登場で読書環境が一変したピンチョンの 代表作「重力の虹」(1973)に対し、多分野に亘る研究者を擁する本学会で、学際的な議論に弾みをつけべく企画されたパネルである。翻訳者佐藤による包括的なイントロダクションに続けて、二つの「読み」が披露される。スウィフトの研究で知られる武田は、『ガリヴァー旅行記』(特に第三篇)と『重力の虹』が、いずれも科学とオカルトと権力とのパラノイア的三位一体を暴くために妄想・狂気と紙一重の過剰な世界を幻視する様を分析する。一方ポストヒューマン研究の先端に立つ門林は、「技術的無意識」(N. Thrift)を鍵概念とした『重力の虹』読解の可能性を提示する。近代の始まりと終わりをつなぐ視座から、人間的限界も踏み越えて、近代の根底にある匿名の欲望と、それに肉薄するテクストのありようを示すことができたらと思う。最後にピンチョン研究が専門の麻生氏からコメントを頂いた上で、フロアに議論を開きたい。