日時:2006年7月2日(日) 9:30-11:30
会場:東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム1
・遊女をめぐって――古代・中世を中心に/沖本幸子(日本学術振興会特別研究員)
・男性芸能集団「猿楽」における女性性――稚児および天皇をめぐって/松岡心平(東京大学)
・出雲の阿国をめぐって/小笠原恭子(武蔵大学名誉教授)
【司会】横山太郎(跡見学園女子大学)
日本芸能史は、ある意味で女性の排除の歴史である。明治における女優の誕生が軋轢を伴ったこと自体に、公的な視線の場に〈女〉の身体をさらすことを避忌する「伝統芸能」の性格が現れているとも言えよう。にもかかわらず、日本の有力な芸能ジャンルのいくつかが、女性(的なもの)を起源とし、あるいはそれを媒介として形成されたことを、私たちはどう理解すべきなのだろうか。中世的な歌や舞は、遊女と総称される女性芸能者を抜きにしては成立しえなかった。能楽は男性の芸能として制度化されつつも、女装の稚児や女性芸能者の歌舞を自らの根底に抱えている。歌舞伎が出雲の阿国に起源するとされていることは、言うまでもないだろう。本パネルでは、このように起源として〈女性的なもの〉を抱えながら、それをのちに排除することを繰り返してきた日本芸能の歩みの検討を通じて、日本文化史のなかで作用する重要な「性の政治」の一局面を浮かび上がらせ、その意味について考察する。(パネル構成:横山太郎)