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田中純氏、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞

学会員の田中純氏が、『都市の詩学』により、平成19年度芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞しましたを受賞しました。受賞理由等、詳細は文化庁ホームページをご覧ください。

「国際小シンポジウム:肖像をめぐる東西の観点」

2008年3月18日、台湾国立博物館(台北市)において台湾と日本の研究者による「国際小シンポジウム:肖像をめぐる東西の観点(「肖像畫的東西觀點」小型國際學術検討會)」が開催された(主催:国立台湾師範大学芸術史研究所、国立台湾博物館、日本科学研究費補助金基盤研究(B)「『肖像』をめぐる脱領域的研究」共同研究グループ[研究代表者:岡田温司、京都大学大学院教授])。岡田温司氏ならびに黄貞燕氏(台湾国立客家博物館研究員/台北芸術大学博物館研究所助理教授)による各基調講演のほか、日台の美術史学・芸術学研究者による6件の研究発表がおこなわれ、多様な作例と視点とを交えて活発な討議と意見交換がすすめられた。各題目(日本語訳)は次のとおり。[なお(  )内の記述は、内容の一端が伝わるよう、筆者が独断で付したものであることをあらかじめお詫びする。]

【日本】岡田温司「肖像のパラドクス」(ポルトレ、リトラットの語源に内包される揺らぎ、肖像における模倣と表出、現前と不在、顕在と潜在、保管と開示、隠匿と暴露、“私の肖像だがこれは私ではない”[ディドロ]をめぐって―京都大学大学院教授)/篠原資明「目の中の星」(1950-60年代日本の少女マンガの瞳の描写、軟体動物の内分泌物のごとき真珠層の光輝の表象について―京都大学大学院教授)/並木誠士「肖像としての騎馬像」(狩野正信筆《足利義尚像》をめぐる分析、日本近世美術における支配者表象としての騎馬肖像の衰微に関する論考―京都工芸繊維大学大学院教授)/喜多村明里「イタリア・ルネサンス初期肖像美術の源流にみる呪術性と記念性」(ドナテッロの着彩胸像作例と中世奉納像の連関性、キャスティング[型取り鋳造]による肖像の意図について―兵庫教育大学大学院准教授)

【台湾】林麗江「明代『帝鑑図説』にみる張居正の『聖王』のヴィジョン」(テキストと挿画の構造的連関、万暦帝を中国歴代の聖王として、張居正を忠臣(蘇東坡)として間接的・暗示的に提示する仕掛けについて―国立台湾師範大学美術系所副教授)/林煥盛「国立台湾博物館所蔵《潘敦仔肖像画》修復報告」(清代の台湾官僚肖像画軸の修復と表装表具の問題、台湾原住民風俗の描写について―美術修復家)/王淑津・翁佳音「17-18世紀の台湾原住民図像に関する小論:物質文化的視点から」(原住民図像の類型とその変容、17世紀ヨーローッパ人による図像から18世紀清帝国による図像への推移にみる、外来の統治者による原住民のイメージについて。原住民首長とその権力を象徴する藤杖など、原住民の具物・衣装が、物質文化の流入とともに、意味づけとともに形態を変えていく過程について―台湾植民地時代の表象・肖像研究者)

研究者・学生からなる約80人の聴衆を前にした各講演・発表後の質疑応答では、日台の各発表者のほか王秀雄氏(国立台湾師範大学名誉教授)、曾曬淑氏(国立台湾師範大学美術系所教授)、王耀庭氏(国立故宮博物院書画部長)がコメンテーターとして出席され、岡田温司氏をゲストとした全体討議では、芸術学・美術史学と歴史学、日本史と台湾史、民俗学・文化人類学、統治者の文化と庶民・大衆の文化、物質文化、等々のあらゆる視点が交錯・融合することとなった。なお、篠原氏の発表は台湾の鋭敏な若い学生の関心を集めたたようで「日本ではマンガについても高度な研究がされているのですね、台湾ではほとんど無いので実に刺激的でした」との声が聞かれた。日台の美学美術史学・芸術学研究者を中心とした本シンポジウムは、アジアにおける同時代的な研究交流の新たな一例としても、興味深く有意義なものとなった。(喜多村明里)

表象文化論学会第3回大会プログラム

表象文化論学会第3回大会
2008年7月5日(土)・6日(日)
早稲田大学・小野梓記念講堂(5日)/東京大学・駒場キャンパス(6日)

■7月5日(土)早稲田大学・小野梓記念講堂(早稲田キャンパス・27号館)
14:00−16:00
第一部:シンポジウム「文学と表象のクリティカル・ポイント」
【パネリスト】東浩紀・堀江敏幸・古井由吉
【司会】芳川泰久

16:30−17:30
第二部:「かろうじて夏の夜の幻想」
川上未映子・坂本弘道・清水一登

■7月6日(日)東京大学・駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム1〜3
10:00-12:00
パネル1:コラボレーションルーム1
写真行為の現場
交差する「それは‐かつて‐あった」──フォトモンタージュの意味作用/井上康彦(東京藝術大学)
ハンス・ベルメールの芸術実践とステレオ写真の関係/調文明(東京大学)
スナップショット」再考──「コンポラ写真」を中心に/冨山由紀子(東京大学)
【コメンテイター】田中純(東京大学)【司会】冨山由紀子(東京大学)

パネル2:コラボレーションルーム2
構想力と表象の臨界──言霊、芸術、人間的自然
人間的自然と詩的想像力──ヴィーコと宣長/友常勉(東京外国語大学)
構想力の射程──シモーヌ・ヴェイユと西田幾多郎/今村純子(慶應大学)
富士谷御杖における倫理的構想力/畑中健二(東京工業大学)
【コメンテイター】【司会】岩崎稔(東京外国語大学)

14:00-16:00
パネル3:コラボレーションルーム1
権力者の肖像
変容する皇帝──ルドルフ二世の肖像画をめぐる考察/坂口さやか(東京大学)
複製技術時代のレーニン/河村彩(東京大学)
戦時期及び占領期における昭和天皇の肖像/小山亮(明治大学)
【コメンテイター】加治屋健司(広島市立大学)【司会】平倉圭(東京大学)

パネル4:コラボレーションルーム2
可謬的人間の表象
崇高論におけるこころの働き方についての考察──『判断力批判』第一部解釈への一視点/大熊洋行(東京大学)
罪責からの倫理──テオドール・W・アドルノと思考の負い目/茅野大樹(東京大学)
経済原理と特異性──可謬性概念を通じた共同体把握の試み/三河隆之(東京大学)
【コメンテイター】宮崎裕助(新潟大学)【司会】三河隆之(東京大学)

パネル5:コラボレーションルーム3
表象文化論と精神医学のコンサルテーションリエゾン
ファントム空間を手術する──DMT(dance/movement therapy)試論/小椋哲(東京大学医学部附属病院)
拒絶と感応──カタトニアとヒステリーの図像学/斉藤尚大(東京都立豊島病院)
イマージュとしての発生学、形態学──表象を介した解剖学と精神医学の結合を構想する/磯村大(東京大学医学部附属病院)
【コメンテイター】原和之(東京大学)【司会】小林康夫(東京大学)

16:30-18:30
パネル6:コラボレーションルーム1
漂流するハリウッド──両大戦間期におけるハリウッド映画のグローバル/ローカル化
ベルリンとハリウッドの狭間で──ジョー・マイ『印度の墓標』(1921)における対米輸出戦略/竹峰義和(武蔵大学)
「ハリウッドの分身」エイゼンシュテインとアメリカ映画/畠山宗明(早稲田大学)
アメリカン・ギャングスター──一九三〇年代小津安二郎の犯罪メロドラマ/御園生涼子(東京大学)
【コメンテイター】吉本光宏(ニューヨーク大学)【司会】竹峰義和(武蔵大学)

パネル7:コラボレーションルーム2
物体的な、あまりに物体的な──自然史の只中
裂け目の深さ──ジル・ドゥルーズ『意味の論理学』における「物体的」深層/千葉雅也(東京大学)
悪しきパントマイム──『ラモーの甥』の生理学/大橋完太郎(東京大学)
カリス=借金帳消しのリアリズム──新約聖書への生態心理学的アプローチ/柳澤田実(南山大学)
【コメンテイター】染谷昌義(高千穂大学)【司会】佐藤良明

パネル8:コラボレーションルーム3
19世紀メディアと残滓としての身体
異像の系譜としてのステレオ写真/細馬宏通(滋賀県立大学)
あらわれる音像、とらわれる身体──1880年前後の「両耳聴」概念をめぐって/福田貴成(西武文理大学)
動物・痕跡・同一性──19世紀末フランスにおける犯罪者の身体/橋本一径
【コメンテイター】【司会】前川修(神戸大学)

*プログラムは予告なく変更される場合があります。