新刊紹介 単著 『ウィリアム・フォークナーと老いの表象』

塚田幸光、ほか(分担執筆)
金澤哲(編著)
『ウィリアム・フォークナーと老いの表象』
松籟社、2016年3月

文学は、如何に「老い」を描き、そこには何が見えるのか。本書が追求するのは、ウィリアム・フォークナー文学と「老い」、その表象の変遷と変容である。若さを肯定し、老いを否認するアメリカ——若さへのオブセッションを開示/隠蔽し続けるアメリカン・イメージとは何か。「老い」の表象とは、必ずしも作家の晩年に符号するステロタイプではない。ヤング・アメリカと称される若き国家が抱える老い、或いは死の瞬間から立ち現れる老いなど、作家が見据えるのは遍在する「老い」の多義的な姿だろう。このテーマは、アメリカ文学にとって、避けて通れない難題であり、それ故に強烈なオリジナリティとなるはずだ。

本書では、人種・ジェンダー・階級という従来の批評的視座に加え、エイジング(老い)という思考の枠組みを導入する。これは、従来のジェンダー研究が見落としてきた領域であり、いわばアメリカン・イメージのダークサイドを見る試みである。フォークナー文学にエイジングという視座を接続し、表象のゆれを見る。本書が考察するのは、フォークナー/エイジング・スタディーズの文学・文化論的可能性である。(塚田幸光)

塚田幸光、ほか(分担執筆)金澤哲(編著)『ウィリアム・フォークナーと老いの表象』松籟社、2016年3月