新刊紹介 翻訳 『メディアはマッサージである 影響の目録』

門林岳史(訳)
マーシャル・マクルーハン、クエンティン・フィオーレ(著)、加藤賢策(デザイン監修)
『メディアはマッサージである 影響の目録』
河出書房新社、2015年3月

本書は、1967年に刊行され、マクルーハン・ブームに乗って大ベストセラーになったヴィジュアル・ブック『The Medium is the Massage: An Inventory of Effects』の文庫版新訳である。本書が刊行された当時、マーシャル・マクルーハンの名前は、「メディア」という視点から西洋の文明史を語りなおすとともに、同時代に起こりつつあった社会の変化に理解の糸口を与えてくれる思想家として、すでに広い注目を集めていた。しかしながら、「メディアはメッセージである」、「クールなメディア」、「グローバル・ヴィレッジ」といったキャッチーな標語とは裏腹に、すでに刊行されていたマクルーハンの単著『グーテンベルクの銀河系』(1962年)と『メディア論』(1964年)は、一直線に進まない論述と晦渋な文体ゆえ、けっして分かりやすいものではなかった。

そのような状況のなか、ジェローム・エイジェル(編集者)、クエンティン・フィオーレ(デザイナー)の二人組がマクルーハンのテクストを大胆なタイポグラフィで配置し、さまざまなイメージとコラージュすることで簡潔なパッケージに仕立て上げたのが本書である。本書は各国語版を含めると100万部近く売り上げたとされ、それ自体、マクルーハンの思想を伝える「メディア」となっただけでなく、ブック・デザイン史においても重要な位置を占める作品となった。また、ポップ・カルチャーやカウンター・カルチャーの興隆から、ジョン・ケージ、アンディ・ウォーホル、フルクサスなどの前衛芸術の動向、そして、ヴェトナム戦争、公民権運動、ケネディ大統領葬儀といったシリアスな社会情勢にいたるまで、1960年代アメリカの時代状況を陰に陽に参照しながらマクルーハンの思想を図解する本書は、現在から振り返ると、マクルーハンが受容された社会的コンテクストを鮮やかに伝えている点においても重要な価値を持っている。

今回の日本語新訳にあたっては、デザイナーの加藤賢策との共同作業によって、原書のレイアウトをなるべく損なわないよう日本語という言語と文庫の判型に落とし込むよう配慮したほか、本文の理解の助けとなるよう巻末に詳細な「副音声」解説を付した。(門林岳史)

門林岳史(訳)マーシャル・マクルーハン、クエンティン・フィオーレ(著)『メディアはマッサージである 影響の目録』