新刊紹介 編著/共著 『映画とテクノロジー(映画学叢書)』

塚田幸光(編著)
門林岳史・木下千花・中垣恒太郎(ほか分担執筆)
加藤幹郎(監修)『映画とテクノロジー(映画学叢書)』
ミネルヴァ書房、2015年4月

テクノロジーは新たなクレオールを作るのか。下半身不随の男が、アバターにリンクすることで、身体の自由を得る。これは皮肉な逆説だろう。ジェイムズ・キャメロン『アバター』(2009)が提起するのは、テクノロジーが生みだしたキメラ、或いはクレオールに他ならない。ポストモダン時代のユートピア/ディストピアは、複層化する身体とテクノロジーの帰結である。

本書では、映画とテクノロジーをめぐる表象/言説を10の視座から考察する。第1部「テクノロジー×表象」では、鈴木繁(『マイノリティ・リポート』)、門林岳史(『攻殻機動隊』)、木下千花(『悪魔の赤ちゃん』)、中垣恒太郎(『トゥルーマン・ショー』)、塚田幸光(『時計じかけのオレンジ』)、第2部「スクリーン×音響×テクノロジー」では、北浦寛之(日本映画とワイドスクリーン)、小野智恵(アルトマンと音響)、碓井みちこ(ヒッチコック)、第3部「メディア×アーカイヴ×テクノロジー」では、波多野哲朗(実写とアニメーション)、板倉史明(映画復元)が議論を展開している。三つのカテゴリーから見えてくるのは、「映画とテクノロジー」の複数の関係性であり、その複層的な意味に他ならない。本書に収められた10編の論考は、「映画とテクノロジー」の批評的可能性を示し、その氷山の下部を探求する契機となるはずだ。(塚田幸光)

塚田幸光(編著)、加藤幹郎(監修)門林岳史・木下千花・中垣恒太郎(ほか分担執筆)『映画とテクノロジー(映画学叢書)』ミネルヴァ書房、2015年4月