新刊紹介 編著、翻訳など 『実験映像の歴史――映画とビデオ 規範的アヴァンギャルドから現代英国での映像実践』

犬伏雅一ほか(訳)
A.L.リーズ(著)『実験映像の歴史――映画とビデオ 規範的アヴァンギャルドから現代英国での映像実践』
晃洋書房、2010年6月

英国の実験映像の歴史について詳しく知りたいのであれば、アートカウンシルの映画担当(1977~2000)であったデイヴィッド・カーティスの A History of Artists’ Film & Video in Britain(07)を読めばいい。欧米全体のビデオアート史としては、クリス・メイ=アンドリューズのA History of Video Art (06)があるし、理論的問題が最優先であればニッキー・ハムリンのFilm Art Phenomena (03)を読めば学ぶところ大である。ところが、この推薦の辞には、前提があり、それは、欧米全体の実験映像についての俯瞰的知識、ならびに英国の映像事情についての知識である。この二つの要件を満たしてくれるコンパクトな著作がリーズの実験映像史だ。実はリーズ自身も執筆の狙いについて、実験映像に対する基礎的理解の提供であると語っている。メディア横断的に思考を展開しようとするとき、実験映像を射程に入れるのは当然であるが、この領域に不案内である場合、本書は最初に通過してもらいたい一冊であり、次のステップに繫がる情報は翻訳過程で十分に盛り込んである。(犬伏雅一)